目的と目標。目的に向かって目標を運用する

目的は大きな方向性。目標はいわば目的を遂げるためのプロセスに過ぎない

叶うといいね
episode21

ホームランでなくていい。まずは犠牲フライで1点

広告代理店に勤めて3年。僕はどこか別の世界で、ものづくりをしたいと考えるようになっていた。広告代理業という多種多様な業種に触れる仕事を通して、一層その思いは強くなっていった。

「誰かの生きる力になる作品」をつくる。就職先が決まらないことで、思いついた人生の目的。それが音楽を離れて音楽以外の道を模索した時に、僕が導き出した答えだった。

採用広告という特殊なジャンルではあるけれど、おかげで「自分の作品を持つ」という最初の目標は、どうやらクリアできたようだった。でもそれは目的を遂げるまでの最初の一歩に過ぎず、ゴールはまだまだ遠い。

そもそも「誰かの生きる力になる作品」をつくるという目的は壮大だ。誰かに生きる力、生きる勇気を与えるような作品がこんな僕に作れるのだろうか。そのためには、いくつもの目標をクリアしていく必要があるように思えた。それは言い換えれば、目的を見失わない限り、たくさんの目標にチャレンジしていいということでもある。

荒波に舟を出し、なんとか生存して航海を終えられた時、そんな力のある言葉が吐けるようになるのかもしれない。今はひとつでも多くの経験をすることが大切なような気がしていた。

「目標なんて持たない方がいい」。義理の父はいつも言う。「達成したら向かうべき先がなくなってしまう」と。

それを聞きながら、僕はいつも思う。それは目的と目標を取り違えてはいないかと。あくまで目標は、目的を達成するための通過点に過ぎないのではないかと。

人生は不条理なものである。よく耳にする言葉だ。やっと岩を山頂まで押し上げられると思った矢先に岩は転がり落ちていく。人生が本当に、そんな不条理なものであるならば、なおさら目的は果てしなく高いものの方がいい。

 

叶うかわからないほどに高い、山頂到達という目的に対して、目標といういくつもの登山ルートを用意する。1合目、2合目、3合目とクリアできれば、その度に成長できるわけだし、クリアしてもまだまだ先がある。それにクリアできない場合だって、また別の登山ルート(目標)を用意できる。

果てしなく遠い目的地と、そこに向かうためのいくつもの目標。そう考えれば、「誰かの生きる力になる作品」をつくるという目的は、辿り着けるかわからないほど遠く、目的地に適しているように思えた。

ホームランでなくていい。まずは犠牲フライで1点。僕はそんな気持ちで、職場の同僚に話をして、彼の担当顧客である新興の出版社の面接を受けた。自分が作家になれるわけではないけれど、出版プロデュースという仕事に興味を持ったからだ。広告ではない、別の、ものづくりの現場を見てみたい。でも入社後の最初のステップは「書店営業から」ということだった。

内定が決まった数日後の休日、僕はバスルームで頭を洗っていた。心地よいシャワーの刺激と単調なその音の中に先日聴いた言葉が蘇った。「フリーペーパーを創刊するんだ。いっしょにやらないか?」 それはずっとお世話になってきた僕よりひとまわり近く年上の知人の言葉だった。

書店営業より創刊を控えるフリーペーパーの方がやれることの自由度は高い。それに先日話を聴きに行った六本木のマンションオフィスにも何か惹かれるものがあった。「ベンチャー」という言葉がまさに流行っていた時代で、小さなマンションオフィスは「会社は小さくても可能性は未知数」ということを物語っているようだった。

僕はその人に電話を掛け、「この間の話ですが、やらせて下さい」と伝えた。新興の出版社を紹介してくれた同僚には申し訳なかったけれど詫びを入れ、内定辞退の連絡も入れた。でもその時にはまだ、これから受けることになるベンチャー企業の洗礼なんて考えてもみなかった。

叶うといいね

そんなに自分を責め立てなくてもいいんじゃない?
勝敗なんて 長い道のりの通過点
明日になれば また朝日はのぼるから
いつものように遠くをみつめて
歩いてゆこう

いつも遠くをみている
キミの瞳に映っている素敵な景色が
叶うといいね 叶うといいね

ひとり打ちひしがれて 涙うかべても
悔しさが蘇る力になるから

そんなにかなしい顔しなくてもいいんじゃない?
目標なんて いわば目的の通過点
明日になれば また一日は始まるから
いつものように遠くをみつめて
歩いてゆこう

いつも遠くをみている
キミの瞳に映っている素敵な景色が
叶うといいね 叶うといいね

 

叶うといいね

Music Video「叶うといいね」

Lyrics/Composed/Arranged/Movie:Chihiro

-- SpecialThanks --

<Vroid 衣装、パーツ>
赤羽根衣装店/赤羽根さん(後輩女性のスーツ)
OFFGALA/galaさん(ヒロの髪型)
studioH。さん(ヒロのスーツ・Yシャツ・ネクタイ)
Shima's 製作所/かわしぃ /(旧:しま)さん(後輩女性の学生時代のバスケユニフォーム)
vear clo./渡辺秋穂さん(後輩女性のドット柄ルームウェア)
もちょんさん(ライラ服のbutton)、華音3Rさん(ライラ服のlacework)
<背景画>
背景専門店みにくるさん(オフィスの廊下・オフィスフロア×2)、ACworksさん(後輩女性のバッグ/改変)
果野さん(営業成績表のコンクリート壁)、fuzisawaさん(屋上遠景)
recnac999さん(屋上からの景色・ヒロの背景の屋上)、yoseiさん(屋上の柵・ロッカールーム)
いてざさん(缶コーヒー)、背景職人Mさん(バスケット練習場)
Sunny Illustrationさん(観葉植物/パキラ)、ぶたどんさん(後輩女性の部屋の夜景・バスケコート)
ようすけさん(バスケットボール)、シグ子さん(バスケコートの床)
designbeginnerさん(連想の枝の丸)、acworksさん(連想の枝の紙の背景)
1mabuさん(缶コーヒーのベンチの木目)

Vocal:Vocaloid MEIKO V3 / Character:Vroid-Studio、3tene
Motion Capture:カーネギーメロン大学モーションキャプチャライブラリ、Jennifer Sumbu Longeさん
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