デザイン会社の募集は経験者を対象としたものばかりだった。職業訓練校に届く求人票も美大卒や美術専門学校卒の子ばかりで埋まってしまった。20代後半の実務経験のない者を喜んで採用するようなデザイン会社はないのだろう。現実はあまくはなかった。
もはや向かうべき道もないのかと百貨店の屋上で空を見上げ、途方に暮れる。「個性というものは目的に向かうベクトル上に表れる。」 いつか本で読んだのか、誰かの講義で聞いたのか、そんな言葉を思い出した。余計にみじめな気分になった。
夏の名残りの熱い日差しにめまいを感じ、僕はクーラーを求めて百貨店の本屋に逃げ込んだ。気がつくと未練たらしくデザインのコーナーにいる。その時に何気なく手に取ったデザイン年鑑に僕は面白い作品をみつけた。デザイン年鑑は、その年に世に出たデザイン作品で優れたものを掲載している分厚い高価な本で、その中に「採用広告」のデザインが掲載されていた。ちょっと他のページの作品とは色も匂いも違う広告作品だった。
それらは当時刊行されていた中途採用求人誌に掲載された広告作品だった。企業が求める人材像や事業背景を広告の手法で表現し、その企業と人材の相思相愛を実現する広告…。僕はハッとした。
人生の中でその大半の時間を占める仕事。その舞台となる会社とそこで働く個人の相思相愛。ここなら自分が目指す「誰かの生きる力になる作品」のヒントとなる何かと出会えるかもしれない…。僕は自分の直感を信じ、すぐに転職情報誌のコーナーに場所を変え、その情報誌を刊行している版元の募集の有無を調べた。
僕がみた限り、当時その版元の中途採用はアルバイトでの採用のみで、入社後、何年かの実績をみてから社員への登用の可能性もあると謳っていた。正社員になれる確率はものすごく低そうな言い回しだった。嫁の心配そうな顔がぼんやりと浮ぶ。
同じ転職情報誌の別のぺージにはそれらの情報誌専属の広告代理店の募集も出ていた。専属の広告代理店は正社員の募集だった。僕は版元の会社説明会に参加する一方で、専属代理店の面接も受けることにした。
面接で印象的だったのは、版元の場合は情報誌ごとに担当がわかれるのに対し、代理店は、すべての情報誌の広告を担当できるということだった。ターゲッットが限定されないのは魅力的だ。年齢や性別に捉われず、幅広く作品を作ることができる。ほぼ代理店に気持ちは固まっていたところに内定の連絡があった。制作職ではなく、営業職ではあったけれど迷いはなかった。
新人営業マンは、分厚い見本誌を何種類も営業バッグに入れ、1日100件を目標に飛び込み営業をする。営業バッグは20リットルの灯油缶くらいの重さだった。来る日も来る日も地図を塗り潰すように飛び込んだ。たまに話を聞いてくれる人事担当者もいたけれど、そのほとんどは門残払いだった。1日の平均飛込数は60~80件くらいだったと思う。
自分の作品をまだ持たない僕は、過去の掲載誌から優れた広告作品をファイリングして持ち歩いていた。話を聞いてもらえる機会には、その広告のどこが優れているのかを語り続けた。自分に広告制作を担当させてほしいという思いだけが原動力だった。
半年もすると名刺交換をして話を聞いてくれた人事担当者から電話が入るようになった。最初から決めていたとおり、広告制作は自ら行う。電話の数は半年を機にどんどんと増え、1年が経つと辞めていく先輩の顧客の引継ぎもあって、200社を超える企業を担当するほどになっていた。
9時の朝礼に始まり、営業に出る。18時とか19時に会社に戻り、営業日報を提出するのが21時くらい。そこから朝の5時までが制作としての時間になる。小さい枠の広告から1ページをまるまる使った広告まで、すべての原稿に効果を上げられるコピーをつくり、一球入魂の原稿制作を心掛けた。最大時で月に250本、週換算で50~60本の原稿を入稿した。寝る時間さえなかったにも関わらず、苦痛を感じることは一切なかった。僕はその仕事を心から楽しんでいた。
自分の作った広告にたくさんの応募があり、クライアントも採用された人も喜ぶ。クライアントからの感謝の言葉と、自分の制作した広告で入社した社員さんへの取材で聴ける声。それは僕が望んでいた「心から心酔できる仕事」であり、「自分がその仕事に誇りを持てる仕事」だった。
やっつけろ! ガッツ!トリケラ やっつけろ! ガッツ!トリケラ
権威あるHow to本 読みあさる みんなモンスター
尋常な基本戦略では 太刀打ちできないじゃん、ねぇ!
興味ある趣味のジャンルなら 自分の土俵になるじゃん
そう引き寄せ 積み上げて オリジナルなら文句言わせないじゃん!
さあ 踏み込め そう 楽しむだけ
そう ねじ伏せろ 相手は自分自身なんだから
そうまわりは関係ない 今の自分を超えてゆけ!
そうまわりは関係ない 今の自分を突き破れ!
そうまわりは関係ない 今の自分を超えてゆけ!
そうまわりは関係ない その常識をぶち壊せ!
I-My-Me-Mine 自分にだけは 嘘はつけない つきたくない
Ay Yi Yi 「今日こそ!」なんて 上手く行くまでやってればいいじゃん!
頭蓋骨を貫通する ど真ん中の企画があるじゃん!
既成概念くつがえし 胸を張ったら 無敵になるじゃん!
さあ 踏み込め そう 楽しむだけ
そう ねじ伏せろ 相手は自分自身なんだから
そうまわりは関係ない 今の自分を超えてゆけ!
そうまわりは関係ない 今の自分を突き破れ!
そうまわりは関係ない 今の自分を超えてゆけ!
そうまわりは関係ない その常識をぶち壊せ!
I-My-Me-Mine 自分自身に 言い訳のない人生を
Ay Yi Yi 他所は他所だと上手く行くまで続ければいいじゃん!
Music Video「ガッツ!トリケラ」
Lyrics/Composed/Arranged/Movie:Chihiro
-- SpecialThanks --
<Vroid 衣装、パーツ>
OFFGALA/galaさん(ヒロの髪型)
studioH。さん(ヒロのスーツ・Yシャツ・ネクタイ)
なまこん庵/霜月 泉さん(担当者のスーツ)
ワンダホの店(wonderfulp store)/ワンダホさん(ヘッドホン)
<背景画>
acworksさん(書斎の机の正面棚)、スクラッチングマシーンさん(ノートPC)
designbeginnerさん(連想の枝の丸)、ウレイさん(書斎のドア側の背景)
ぶたどんさん(書斎の机側面/改変)、flatさん(書斎のレースのカーテンと窓)
さとうさん(会社の玄関入口前)、背景専門店みにくるさん(オフィスのデスク/夜は改変)
@まるころさん(ノートPCのメーラー画面/改変)、taitaicityさん(ホルン)
kikitanさん(ステージの椅子と譜面台)、せ⊃さん(ライヴハウス)
みつさん(企画書の表紙デザイン)、ミガマヤさん(周りの人々)
スイレンさん(見上げるビル群)、recnac999さん(会議室の背景)
Sohokkaiさん(ノートPC画面の企画書)
Vocal:Vocaloid MEIKO V3 / Character:Vroid-Studio、3tene
Motion Capture:カーネギーメロン大学モーションキャプチャライブラリ、Jennifer Sumbu Longeさん
StockFootage:Storyblocks