礼儀礼節。
敬意と感謝が所作に表れる

上司と部下、店員と客、親と子供…、立場の上下に関わらず、そこにあるべき敬意と感謝を知る

LOGOS
episode11

泥沼とハーレム。「逃げちゃだめ」

高校に入学すると、すぐに軽音部に入部した。クラリネットをやめて、小学6年生からはギターを始め、中学3年間は家に帰れば毎日ギターをかき鳴らしていた。そんな僕にとって高校で軽音部に入部することは当然のことだった。でも数カ月で辞めることにした。「体育会系の文化部」と呼ばれていた軽音部の上下関係に疑問を感じたからだった。

上下関係そのものが嫌なわけではない。でも、理不尽な扱いには従えない。上級生から理由もなく蹴りを入れられたその日、僕はそれを待っていたように「辞めます」と部長に告げた。放課後の教室でアコースティックギターを抱え、勝手に同好会的な活動をはじめた。ギターに興味を持つ人たちが集まってきた。中学3年間弾いてきたので、コードで歌うくらいは簡単に教えられる。そこはこれからギターを始めたい人にとって格好のマンツーマンレッスンの場だった。優等生も、ちょい悪も、ギターという共通項でそこでは結ばれていた。いい時間だった。

そんな中、自分たちの歌う場所を確保したいという下心も手伝って、僕は文化祭実行委員になった。しかしそこで待っていたのは、またしても疑問視せざるを得ない上下関係だった。僕ら1年生男子は先輩たちの奴隷のような存在だった。

膝まで泥につかりながら材木を運ぶ、僕ら1年生男子。それを校舎の土台となっている小高い場所から見下ろし、カツを入れる上級生。まるでハーレムのように5、6人の1年生女子を従えている。キャーキャーと何が楽しいのか、この場面に何の疑問も感じないその子たちの脳みそにも嫌気が差した。

 

「逃げちゃだめ。」 その時、久しぶりにあの声を聴いた。そう、僕は逃げない。やり切って、来年、再来年は自分が変えてやると心に誓った。生温かい泥の感触を足の指の間に感じながら、いつか来るであろう改革の日を僕は思い描いた。高校生の頃の僕は、まだ全身に力がみなぎっていた。晴れた日には空を見上げ、「これから何だってできる」と心から思えた。

2年生で文化祭実行副委員長、3年生で生徒会長と文化祭実行委員長を務めた。2年に渡って、実行委員と部活動の部長が全員集まる最初の会合で僕は同じ話をした。泥沼とハーレムの話だ。学年の上下に関係なく、お互いに敬意を持って接してほしい、それは僕の切なる願いだと。

礼儀というものは、下の立場から上の立場への行いで語られることが多い。でもそれは同列や上の立場から下の立場に対しても同じはずだ。そもそも礼儀とは、決して一人では生きられない僕らの、自分以外の誰かへの敬意と感謝から生まれるものではないだろうか。その感謝を知れば、自然と所作に表れ、それを総じて礼儀と呼ぶのではないだろうか。上司と部下、店員と客、親と子供、上下に関係なく、この社会のあらゆるシーンにおいて。

礼儀知らずとは、相手に助けられていることにも気が付かない失礼な行動や言動のことだと思う。あの泥沼とハーレムの話のように。

LOGOS

実りを称えては、鳥は歌い、虫たちは踊る
枯れ葉の下で土に返す

陽光は森に降り注ぎ 渇いた土を雨が潤す
見渡す限りの風景は手を取りあって時代を進む

空を染めてる街の灯り 家路を急ぐ人波の中
男の声は響き渡り 改札口は塞がれたまま

何を怒ってるの? みんな見てるし
ただ客の方が偉いとでも?

次から次へ 手の鳴る方へ 手探りで彷徨う
繰り返す側と振り返る側の無秩序な交差点

まだ何を怒ってるの? 見えないし
さあ、「ありがとう」の気持ちを捕まえて

坊やね? 駄々っ子みたいにふてくされて
妙だね? 何をするの? 腕振り上げて

Mamma! mamma mia!  Mamma! mamma mia!
歪んだ正義を振りかざして
Mamma! mamma mia!  Mamma! mamma mia!
小さな犬ほど、よく吠えている

 

陽光は街に降り注ぎ 渇いた心 雨が潤す
見渡す限りの人の群れは見えない糸でつながったまま

何をみているの? みえないの?
ただ目の前の欲望に縛られて

次から次へ 手の鳴る方へ 手探りで彷徨う
繰り返す側と振り返る側の無秩序な交差点

まだ何を怒ってるの? 見えないし
さあ、「ありがとう」の気持ちを捕まえて

実りを称えては、鳥は歌い、虫たちは踊る
枯れ葉の下で土に返す

LOGOS

Music Video「LOGOS」

Lyrics/Composed/Arranged/Movie:Chihiro

-- SpecialThanks --

<Vroid キャラクター>
mariVudo official/mariVudoさん(老人/改変)

<Vroid 衣装、パーツ>
はにょえのお店/hanyoeさん(老人肌テクスチャ)、なまこん庵/霜月 泉さん(老人のスーツ)
Kagayakikyuko(かがやき急行)/Kagayakikyukoさん(駅員制服セット)
もちょんさん(ライラ服のbutton)、華音3Rさん(ライラ服のlacework)

<背景画>
ゆうまどさん(ステージの照明)、nekko_nekonさん(改札口)、ミガマヤさん(群衆の視線)

Vocal:Vocaloid MEIKO V3 / Character:Vroid-Studio、3tene
Motion Capture:カーネギーメロン大学モーションキャプチャライブラリ、Jennifer Sumbu Longeさん
StockFootage:Storyblocks